IT変革の遅れ

わが国は、2000年に成立したIT基本法に基づき、国家戦略としてe-Japan戦略を大々的に掲げました。1990年代のインターネット革命を背景に、通信網の整備や人材育成、電子商取引を推進し、行政や産業のIT化を図るとしました。戦略の柱の一つだった高速インターネットを3,000万世帯、超高速インターネットを1,000万世帯に整備するという目標は達成されました。
しかし、本丸だったITを活用した新産業の創出や人材の育成はおろそかにされました。2000年代にデジタル変革の先導役を期待されたエレクトロニクス産業が、韓国や中国勢の台頭で事業撤退や再編などに追われ、攻めのIT投資や新たなビジネスモデルへの構造転換を進められませんでした。
OECDによれば、米国は2000年から2019年にかけて年間IT投資額を1.7倍に、英国は1.5倍、フランスは2.2倍に増やしましたが、日本は逆に10%減少しています。ベンチャーを育てる機運も欠けました。出る杭を打つ風潮が強く、産業の新陳代謝を遅らせました。日本のデジタル競争力ランキングは2023年に世界32位と、2022年から3つ順位を落として過去最低を更新しています。

(2024年1月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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