SDGsの取り組みの遅れ

世界全体で持続可能な社会を目指すSDGsの取り組みが遅れています。SDGsは、貧困や飢餓、不平等、気候変動などの問題を解決するために、国連が2015年に採択しました。2030年が目標の達成期限ですから、今年は中間地点と言える年にあたります。4年に1度のサミットでは、世界各国があらためて達成に向けた努力の継続を確認することが期待されています。
その目標の一つが飢餓をゼロにですが、深刻な飢餓に直面する人は世界中に2億5,800万人もいます。ゼロになるどころか、新型コロナウイルスの感染が拡大する前の2019年に比べて1.9倍に増えています。世界各地の紛争や異常気象によって飢餓や貧困の深刻さが増しています。SDGsの達成率は、2020年以降ほとんど上昇していません。
わが国は、SDGs達成の国際ランキングで順位を下げ続けています。持続可能な開発ソリューション・ネットワークの報告によれば、2023年には21位とトップ20からも転落しました。アジアでは最もランクが高く、39位の米国や63位の中国を大きく上回っていますが、上位を独占する欧州勢にはなかなか追いつけません。日本の達成度が主要な課題が残っていると評価されたのは、ジェンダー平等や気候変動、生物多様性の保全などです。
もう一つの問題は、日本企業のサプライチェーンです。水資源を大量に消費する、二酸化炭素(CO2)を多く排出する、強制労働が行われているような国から原材料などを輸入している姿勢が問題視されています。持続可能な供給網を整えるために、輸入元を含めて人権や環境に配慮する意識が、日本は低いと思えます。
SDGsの取り組みで近年注目されているのがスピルオーバー(波及)という概念です。先進国の経済活動が、他の国の環境や社会に負の影響を及ぼす効果を指します。繊維や衣料品に関わる温暖化ガスは、その59%が消費国ではなく、サプライチェーン上の生産国などで排出されています。今後、日米欧の先進国は国内の達成に加え、国際協力の拡大が求められます。世界全体での底上げが課題となります。

(2023年8月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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