BSL-4とは、感染した場合の重篤性などから判断して、危険性が極めて高いと考える病原体を安全に取り扱うための設備をもち、かつ最も厳重な管理運営される施設です。国立感染症研究所は、エボラ出血熱などの危険な感染症の原因ウイルス5種類を輸入し、同研究所の村山庁舎に運び込んでいました。2020年に東京五輪・パラリンピックを控え、こうした病気で患者が発生した際の検査や治療の体制を整えるためです。これらのウイルスは、村山庁舎にあるBSL(バイオセーフティーレベル)4という専用実験施設に持ち込まれました。BSLとは世界保健機関の指針を基に、実験施設を扱える病原体の危険度から4分類したもので、一種病原体はBSL4でしか扱えません。室内の気圧を下げ、ウイルスが室外へ漏れ出すのを防ぐといった工夫がしてあります。
これらのウイルスへの検査などの対応は、感染症法で定められています。空港の検疫や全国の医療機関で感染の疑い例が見つかると、検体は感染研の村山庁舎へ送られ、病原体が含まれるか否かが速やかに調べられます。存在が確認されると、患者は防護対策が整った医療機関に運ばれて治療を受けることになります。こうした医療機関は各都道府県で最低1カ所以上あります。
村山庁舎の施設は1981年に建設されましたが、地元の反対などによりBSL-4として使われていませんでしたが、数十年を経て本格稼働する背景には、2000年ごろから世界で重篤な新興感染症の流行が相次いだことがあります。感染研の調べでは、2017年末時点で24カ国・地域にBSL-4施設があるとみられます。発展途上国などの開発が進み、病原体をもつ動物と人が接触する機会は増えています。人の移動は盛んで感染症は国境を超えるため、各国が共同で対策を進めるのが一般的になっています。
(2019年11月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)