2020年のノーベル生理学・医学賞は、C型肝炎ウイルスの発見で、米英出身の研究者3人に授与されました。C型肝炎ウイルスは、世界で7,100万人が感染していると推計されており、肝硬変や肝臓がんの原因となる感染症です。2016年には、C型肝炎ウイルスで約40万人が死亡していると推定されています。C型肝炎ウイルスの発見は、高精度の検査や治療薬の開発につながり、多くの人の命を救ったことが評価されました。
オルター氏は1970年代、輸血を受けた経験のある肝炎患者を調べる中で、当時知られていたA型、B型以外のウイルスによるとみられる肝炎を発見しました。ホートン氏はその後、肝炎を発症した人やチンパンジーの血液などを解析して未知のウイルスを発見して1989年に発表し、C型肝炎ウイルスと名付けました。ライス氏は1990年代、このウイルスに感染させたチンパンジーが肝炎になることを確かめ、原因であることを証明しています。
ウイルス性肝炎では、汚水や食べ物で感染するA型ウイルスのほか、外科手術などの輸血による肝炎の発生が第2次世界大戦の頃から広く認識されていました。血液を介して感染するB型のウイルスが発見され、1976年にノーベル賞を受賞しています。日本国内のC型肝炎患者は推計約150万人と、世界の中でも発症率が高くなっています。年間約2万6千人が肝臓がんで亡くなり、3分の2以上がC型肝炎が原因とみられています。血液製剤による薬害肝炎も大きな問題になりました。
(2020年10月6日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)