2024年の世界の平均気温は、産業革命前からの上昇幅がパリ協定の目指す抑制幅の1.5度を超える見込みです。1.5度で地球温暖化を止めるには、世界の温暖化ガス排出量がゼロに向けて急激に減少する脱炭素化が必要です。2024年は前年比微増とみられ、いまだ減少に転じていません。CO2の各国からの排出量の推移を見ると、先進国では国全体でも1人あたりでも減少していますが、その他の国では減少していないか、むしろ増加が続いています。
途上国・新興国が温暖化ガス排出量を減少させながら、経済発展する段階に入らない限り、世界の排出量が大幅な減少に向かうことはありません。中国などの新興国には自力で実現してもらうとしても、途上国には先進国からの資金的・技術的支援が必要となります。
先進国から途上国へ拠出する気候資金は、2020年までに年間1,000億ドルを達成する約束でしたが、2022年に遅れて達成されました。COP29では途上国側が年1兆3,000億ドルの必要性を掲げましたが、先進国側と折り合わず、2035年までに少なくとも年3,000億ドルという目標で決着しています。民間資金などを含めて1兆3,000億ドルを目指しています。
エネルギーの議論では、都市と地方、現在世代と将来世代、高所得者と低所得者など、異なる立場の間でコスト・受益・リスクの公平・公正な分配が重要な論点となります。これらを明示的に議論しなければ、不当に不利益を被る人々を生み、エネルギーシステムの移行を阻害することになります。様々な立場の間での利害調整や合意形成、信頼構築が必要です。
(2024年12月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)