独バイエルは体のあらゆる細胞に変化できるES細胞を使ったパーキンソン病治療薬の中間段階の臨床試験を2025年初めにも始めます。パーキンソン病は世界で850万人の患者がおり、根本治療が難しい疾患の一つです。パーキンソン病治療は、60年間ほとんど変化がありませんでしたが、細胞治療の登場により、新しい治療法を患者に届けられる可能性が出てきました。
パーキンソン病は、震えや筋肉のこわばりなど運動機能に異常が出る疾患です。脳内にある神経伝達物質のドーパミンを作る神経細胞が減少し、ドーパミンの量が減ることによって発症します。現状では脳内のドーパミンを補充し、症状を和らげる薬が実用化されています。外科治療もありますが、根本原因に対処する治療法はまだありません。
ES細胞からドーパミン神経細胞のもととなる細胞を作り、患者に移植します。住友ファーマはiPS細胞を使ったパーキンソン病治療薬の開発を進めています。パーキンソン病は1つの神経の脱落によって起こります。1種類の細胞の移植で治療ができるため、細胞治療に適しています。ES細胞は次世代治療として期待が高まる一方、日本ではiPS細胞やES細胞を使った再生医療製品は承認されていません。
(2024年12月4日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)