英ケンブリッジ大学と米エール大学のチームは、受精後9~14日ごろのヒトの胚に似た胚モデルをつくることに成功しました。これまでも複数のチームが胚モデルを発表してきましたが、今回、着床後の胚をより本物に近く再現しています。
ヒトの胚モデルの研究は急速に進んでいますが、まだ決定的なブレークスルーはありません。細胞の集合体である胚と疑似的な胚モデルの比較は容易ではありません。今後の大きな焦点は、受精後14日以降の胚をどこまで本物に近い状態で再現できるかにかかっています。日本を含め多くの国では、ヒトの受精卵の培養を受精後14日までに制限する14日ルールがあります。
受精後14日以降のヒトの胚は研究できませんが、疑似的な胚である胚モデルなら道が開けます。着床後にうまく育たない胚の原因を調べたり、生まれつき臓器に異常がある遺伝性疾患の仕組みを解明したりする研究に活用できれば、将来的に治療法の開発にもつながるかもしれません。ヒトの誕生を理解するという科学的な意義も大きなものがあります。
(2023年7月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)