WHOの子宮頸がん征圧のための戦略の徹底により、今世紀中に世界の多くの国々で子宮頸がんは根絶に向かうと思われます。先進国の中で、わが国の女性だけが子宮頸がんで子宮を失ったり、命を落としたりするという不利益を被らないためにも、一日も早い政府による積極的勧奨の再開が望まれます。筆者は一人の産婦人科医として、低下したままのHPVワクチン接種率を座視してきた責任を痛感しており、将来を担う世代に頭を下げて謝りたい気持ちです。子宮頸がんの予防は、科学的に検証されたエビデンスに基づいてプログラムを実施することによってのみ達成できます。そのためには、国民やメディアに対する教育が枢要であり、官民一体となった取り組みが急務です。
(産婦人科の実際 2021年3月号)
(吉村 やすのり)