IgG4関連疾患とは

IgG4関連疾患は病原体などから身を守る免疫の異常によって起こると考えられています。しこりができる臓器は、脳下垂体、涙腺、唾液腺、甲状腺、肺、大動脈周囲、肝臓、膵臓、胆管、腎臓、前立腺など様々です。患者は中高年に多く、国内に数万人いると推計され、国の難病にも指定されています。生活の質(QOL)低下を招くこともありますが、この病気で命を失うことは少ないとされています。
この病気は、21世紀に入り日本が中心になり、概念が確立された難病です。それぞれ別の病気と考えられてきましたが、病変部が異なっても血液中の免疫関連物質IgG4の値が高い共通点が見つかり、全身性の病気とみなされるようになりました。診断基準ができるなど認知度も高まってきていますが、がんなどとの識別が重要となります。
IgG4関連疾患の治療は、ステロイド剤の服用です。しこりがどこにあっても基本的にステロイドが効きます。免疫の働きを抑えるステロイドには、骨粗鬆症や感染症にかかりやすくなるなど様々な副作用の懸念もあります。このため症状が治まったら徐々に量を減らしていきます。症状が治まり投薬をやめた場合、5~7年で約半数が再発するとされています。再発しないぎりぎりの量に抑え、薬を長く使うことが必要となります。
代表的なIgG4関連疾患が、自己免疫性膵炎です。この病気は体内でできた抗体が誤って自分自身を攻撃していると考えられています。結果として、病気を抑えようとIgG4値が高くなっている可能性が高いとされています。自己免疫性膵炎なのに、膵臓がんと間違えて手術をした例もあります。IgG4関連疾患の包括診断基準や自己免疫性膵炎の診療ガイドラインなどが整備されています。約10年前からIgG4関連疾患が医師の間でも知られるようになりました。ステロイドを投与し、病気が改善するかを見て別の胆管炎や胆管がんと区別できることもあります。

(2019年8月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。