京都大学iPS細胞研究所の発表によれば、全身の筋肉が次第に衰えるALS(筋萎縮性側索硬化症)について、iPS細胞を使った創薬研究で見つけた治療薬候補を患者に投与する臨床試験(治験)で、進行を止める効果がみられました。投薬で病気の進行を止める効果は世界初です。ALSは、運動神経の障害で筋肉が徐々に衰える進行性の難病で、国内に約9千人の患者がいます。発症から数年で人工呼吸器を装着したり亡くなったりします。
患者のiPS細胞から病気の細胞を再現し、様々な薬剤を試して、慢性骨髄性白血病の治療薬であるボスチニブをALSの治療薬候補としました。20歳以上80歳未満の比較的軽症の12人の患者にボスチニブを投与しました。用量が多く肝機能障害が出て投薬を中止した3人を除く9人で効果を調べています。1日に100~300ミリグラムを12週間投与した結果、9人中5人で病気の進行が3カ月止まっていました。神経細胞が壊れた際に放出される物質が血液中に少ない患者で効果が出やすかったとされています。
iPS細胞を使う創薬研究では、慶應義塾大学が、5月にパーキンソン病の治療薬を投与する治験でALSの進行を約7カ月遅らせる効果を確認したと発表しています。様々な治療薬候補の治験が進めば、ALSの根治法が見つかる可能性が高まります。
(2021年10月1日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)