iPS創薬の進展

iPS細胞を使って、難病などの治療薬を探すiPS創薬が進んでいます。京都大学iPS細胞研究所の研究チームは、全身の筋肉が衰えるALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者で進行を抑える効果を確認しています。慶應義塾大学などもALSや他の難病で臨床試験をしています。既存薬から新薬候補が見つかれば、創薬の効率が高まります。
ALSは、運動神経の障害で筋肉が徐々に衰えていき、進行すると呼吸ができなくなる難病です。国内に約9千人の患者がいるとされ、発症から数年で人工呼吸器を付けたり、亡くなったりします。既存薬は、病気の進行を数カ月遅らせる効果がありますが、現状では根治につながる薬はありません。
国内で年間約100万人の患者が出るがんに比べ、ALSなどの難病は数少なく、企業が創薬に多額の費用や労力をかけるのをためらうため、治療薬の開発が遅れがちです。そこでiPS創薬が期待されています。他の病気の既存薬を転用するドラッグリポジショニングと組み合わせて、新薬を探す取り組みが進んでいます。
しかし、iPS創薬には課題もあります。既存薬は特許が切れると薬価が低くなり、企業が実用化に消極的になってしまいます。大学などの研究で治療効果があると分かっても、企業が取り組まなければ普及しません。薬価を高めるなどの制度の修正が求められています。

(2021年11月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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