国立成育医療研究センターの研究チームは、iPS細胞を使って、免疫機能をもった腸管のミニチュア版であるミニ腸をつくることに成功しました。病気の原因を探ったり創薬に使ったりすることが可能となります。研究チームは、2017年にiPS細胞などから、大きさ1㎝ほどのミニ腸をつくることに成功しました。しかし、免疫細胞を含むものはできておらず、より本物に近い条件での研究はできていませんでした。
腸管は、食べ物から栄養や水分を吸収するだけでなく、病原体をみつけて排除する免疫のしくみも備えています。クローン病や潰瘍性大腸炎などの腸管の病気の発症には、この免疫の異常が関わるとされています。
今回、従来の方法でiPS細胞からミニ腸をつくるとともに、同じiPS細胞から、マクロファージの前段階の細胞を作製しました。この細胞をミニ腸の中に注入して、内部でマクロファージのような細胞へと成長させました。形状や動き方が、本物の腸管内マクロファージと同様なことや、他の免疫細胞を活性化させる成分を分泌することを確認しています。さらに、大腸菌をのみ込んで殺す機能があることも、実験的に示しています。
病気の診断や治療には、その病気への深い理解が必要です。より生体の腸に近いミニ腸は、原因不明の子どもや乳児の腸疾患の病態解明や、創薬研究に応用が可能となります。
(2022年7月4日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)