大阪大学は、iPS細胞を使って重い心不全の患者を治療する臨床研究を承認しました。近く、厚生労働省に計画を提出し、厚生労働大臣の了承を得たうえで、2018年夏にも研究を始めます。iPS細胞の患者への応用は、心臓では世界で初めてです。他人のiPS細胞から心臓の筋肉(心筋)シートを作製し、心筋梗塞などが原因で心機能が低下した患者の心臓に貼り付けます。18~80歳の3人で実施し、1年かけて安全性や治療効果などを確かめる計画です。
心筋梗塞などによる虚血性心疾患は重症化すると、心臓移植しか治療方法がありません。重症心不全患者は国内に数万人おり、心臓移植以外に根治が望めない患者も多いのですが、提供される臓器は不足しています。備蓄したiPS細胞を使うことで、移植までの期間を大幅に短縮できます。
(2018年3月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)