京都大学の研究チームは、様々な組織になるiPS細胞からつくった軟骨を、ひざの軟骨が傷ついた患者に移植する臨床研究を開始します。対象は、スポーツ中のけがや交通事故などで軟骨が欠けるひざ関節軟骨損傷の成人患者4人です。iPS細胞から、直径1〜5㎜の軟骨組織の塊を複数つくり、軟骨のはたらきを支える組織と一緒に患者のひざに移植します。移植に使うiPS細胞は、京都大学iPS細胞研究所が備蓄している他人のiPS細胞を使います。移植後、1年かけて異常がないか安全性を確認することにしています。他人の細胞を使いますが、軟骨は拒絶反応が起きにくいとされています。
関節を滑らかに動かすためには、骨の端を覆う軟骨が欠かせません。軟骨は硬い骨と違って再生能力がほとんどなく、傷つくと自然には元に戻りません。ひざの軟骨が失われると痛むだけでなく、いずれ関節が変形して歩くことも難しくなります。iPS細胞からつくった軟骨は、まだ数㎜ほどの粒の段階です。損傷範囲が広い変形型ひざ関節症に応用するために、大きさと強度などの課題が残っています。
(2020年1月25日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)