iPS細胞による脊椎損傷の治療

慶應義塾大学の岡野栄之教授らの研究グループは、iPS細胞から作った細胞を脊髄損傷の患者に移植する世界初の手術を実施しました。慶大の臨床研究の対象となるのは、脊髄が損傷してから2~4週間経過し、運動と感覚が完全にまひした亜急性期の患者です。脊髄損傷の国内の新規患者は年約5,000人、全国で10万人以上の患者がいます。脊髄損傷は交通事故などによって脊髄が傷つき、重症だと手足のまひなど運動や感覚の障害が残ります。
臨床研究では、京都大学iPS細胞研究所が第三者の細胞から作って保管しているiPS細胞を利用しています。iPS細胞から神経のもとになる細胞である神経前駆細胞を作製して凍結保存しておき、患者1人当たり200万個の細胞を脊髄の損傷部に注射で移植します。患者本人のものではなく他人の細胞を移植するため、拒絶反応を抑える免疫抑制剤を使います。
まずは最小限の数の細胞を移植し、安全性を中心に検証します。その後、細胞数を増やした場合の有効性や、脊髄の損傷から時間がたった慢性期の患者に対する安全性や有効性を調べるための臨床試験を実施する予定です。

(2022年1月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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