厚生労働省の部会は、iPS細胞から作った心臓の筋肉(心筋)のシートを、心不全の患者に移植する大阪大学のグループの臨床研究について了承しました。早ければ今年度中にも移植が始まる見通しです。iPS細胞から作った細胞を患者に移植する臨床研究の対象としては、目の難病に続き心臓は2番目です。血管の詰まりで血液が十分に届かないために心筋が傷つく虚血性心筋症が対象となります。
京都大学iPS細胞研究所が備蓄している他人のiPS細胞を使い、心筋細胞に育てます。厚さ約0.1㎜のシート状にし、心臓に貼り付けます。シートから栄養を含むたんぱく質が分泌され、血管を成長させるなどして心臓の回復を促します。患者本人ではなく他人の血液から作ったiPS細胞を使うため、治療の開始後に拒絶反応が起こらないよう免疫抑制剤を使う必要があります。万が一、細胞ががん化した時の処置も難しいものがあります。心筋に変わりきっていないiPS細胞そのものがシート中に混じって体内に入ると、腫瘍になる恐れがあります。
(2018年5月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)