iPS細胞を患者一人ひとりからつくると、培養や品質検査に時間と費用がかかります。iPS細胞の備蓄計画とは、拒絶反応が起きにくいタイプのiPS細胞をずぐに提供することを目指すストック計画です。ストック計画は、再生医療の実現に向けて国が2013年から10年で1,100億円投じる事業の基盤事業です。
他人の細胞を移植すると、免疫による拒絶反応が起きます。計画では、原料となる血液の細胞を、免疫の型が他人とよく合う人に提供してもらい、患者と型を合わせられるようにします。こうした型を持つ人はまれで、今年度までに日本人の30~50%、来年度からの5年で最終的に日本人の大半と型が合わせられる種類の準備が目標です。
現在、iPS細胞を使った治療は、理研チームが患者に試したことがあるだけです。有効性や安全性は十分に証明されていません。iPS細胞を使う再生医療製品ができたとしても、普及するにはすでに出回っている治療法を、価格面や治療成績で上回る必要があります。iPS細胞ストックによって、多くの患者が安価で安全な医療を受けられる日が、一日も早く来ることを期待したい。
(2017年12月6日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)