京都大学iPS細胞研究所が、患者への移植用に備蓄している2種類のiPS細胞から異常が見つかりました。iPS細胞の供給を受けた研究機関で、目的の細胞に分化させたところ、一部のがん関連遺伝子に異常が起きていました。異常があった細胞は、患者に移植されてはいません。京都大学iPS細胞研究所は、体の様々な組織になれるiPS細胞を再生医療用に備蓄し、2015年から研究機関や企業に提供しています。提供されたiPS細胞で目的の細胞や組織をつくり、研究に利用したり患者に移植したりしています。
京都大学iPS細胞研究所は、iPS細胞の提供前に複数の遺伝子検査で異常がないことを確認しており、提供後の培養や、組織に変化させた後に異常が起きたと考えられます。移植に使うかどうかという判断は、動物に移植し腫瘍を作らないかという実験と、移植する細胞の種類に応じたがん関連遺伝子を確認することが必要になります。しかし、複数の専門家によれば、移植する直前の細胞に遺伝子の異常があっても、必ず腫瘍ができるわけではありません。
(2020年1月9日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)