MERSは、韓国で今でも感染者が増え続けている感染症です。MERSの感染力はインフルエンザなどより低いとされていますが、重い肺炎などを引き起こして死に至ることもあります。MERSは中東(Middle East)呼吸器(Respiratory)症候群(Syndrome)の略です。原因はMARSコロナウィルスです。MERSのウィルスは、中東のヒトコブラクダが感染源の一つと考えられています。コウモリでも似た遺伝子配列を持つウィルスが見つかっており、感染経路は特定されていませんが、コウモリからラクダにうつり、さらに人に感染したという説が有力です。
コロナウィルスの大きさは、直径100ナノ(ナノは10億分の1)メ-トルほどで、表面から棒キャンディ-のような形のたんぱく質が飛び出しています。これがギリシャ語の王冠(コロナ)や太陽の周りで光るコロナに似ており、名前の由来と言われています。MARSのウィルスに感染すると、2~14日間の発熱やせき、肺炎などの症状が起き、下痢を伴うこともあります。糖尿病などの持病がある人や高齢者は重病化しやすいとされています。2002~2003年に世界で流行した重症急性呼吸器症候群のSARSも同じコロナウィルスですが、SARSより感染力は弱いとされています。
(2015年6月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)