筋肉は、髪の毛ほどの太さの筋線維という細胞が束ねられてできています。これまでは、加齢や運動不足による足腰の衰えは、筋肉の量全体が減るのが原因と考えられてきました。しかし、最近は運動機能の低下には、筋肉の質の低下も関係していると考えられるようになってきています。
筋肉の質低下には2段階あります。筋線維には姿勢を保つなど持久力を発揮する時に使われる赤筋と立ち上がったり階段を上がったり瞬発力が必要な時に使われる白筋の2種類があります。普段から階段の上り下りなどの運動をしないでいると、まず白筋が細くなり、筋線維のバランスが崩れて筋力の衰えにつながります。筋線維の衰えが赤筋など筋肉全体に及ぶと、筋肉の質はさらに低下します。筋線維が細くなったり失われたりすると、筋線維の束に隙間ができて、そこに水分や脂肪、結合組織などが詰まってしまいます。
自分の筋肉の質が低下していないかどうかを手軽に調べる方法があります。座面の高さが40㎝ほどの椅子に浅く腰掛けて腕を胸の前で組み、片足を少し上げて、反動をつけずに1本の足だけで立ち上がることができるか試してみます。左右ともできれば健常と判定されます。
筋肉の質を維持するためには、日々の運動が欠かせません。できるかぎり階段を使うことも大切です。少しきついと思われるくらいの負荷が筋肉の質の向上には必要です。高齢者向けには、転倒しないように椅子の背につかまって屈伸する椅子スクワットなども有効です。
(2017年10月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)