日本の就業者数は、今後急速に細ります。OECDは、2023年に外国人も含めて6,600万人程度と推計しています。出生率が現在の水準に近い1.3が続けば、2100年に3,200万人に半減します。OECDは、人口が減る日本で働き手を確保するための改革案を提言しています。定年の廃止や就労控えを招く税制の見直しで、高齢者や女性の雇用を促すよう訴えています。
OECDは、高齢者や女性、外国人の就労底上げなどの改革案を実現すれば、出生率が1.3でも、2100年に4,100万人の働き手を確保できると見込んでいます。出生率を政府が目標とする1.8まで改善できれば、5,200万人超を維持できるとしています。高齢者向けの具体策では、定年の廃止や同一労働同一賃金の徹底、年金の受給開始年齢の引き上げを提示しています。
OECD加盟38カ国のうち、日本と韓国だけが60歳で定年を企業に容認しています。米国や欧州の一部は、定年を年齢差別として認めていません。日本で定年制が定着した背景には、年功序列や終身雇用を前提とするメンバーシップ型雇用があります。企業は働き手を囲い込むのと引き換えに、暗黙の長期雇用を約束することで、一定年齢での定年で世代交代を迫っています。政府の新しい資本主義実現会議では、高齢者がスキルに見合った待遇を受けられることも念頭に、ジョブ型導入を推奨しています。
現在は65歳となっている標準的な受給開始年齢の引き上げも求めています。同一労働同一賃金の徹底で、正規と非正規の労働者の待遇格差をなくすことにも言及しています。女性の就労促進では、年収が一定額を超えると手取りが減る年収の壁を無くすよう提起しています。外国人労働者の誘致では、差別防止や高い技能をもつ外国人労働者の配偶者が日本で就労しやすくすることも提案しています。
(2024年1月12日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)