OTC類似薬の保険外し

 薬には医師の処方箋が必要な医療用医薬品と、自分で判断し、ドラッグストアなどで買う市販薬であるOTC薬があります。OTC類似薬に明確な定義はないものの、医師が処方する薬で、風邪薬や湿布薬など市販品と成分や効果が同じか似ているものを指します。医師が処方すれば保険が適用され、自己負担は総額の1~3割で済みます。薬局で買うより安いからと医療機関を受診する患者もいます。その場の支払額は抑えられますが、医療費の大部分が税金や保険料で賄われています。

 病気や怪我などの受診で医療機関に支払われた国民医療費は、2023年度におよそ48兆円と3年連続で過去最高を更新し、この10年で20%増えています。高齢者医療への拠出金が重く、現役世代の会社員は、介護・年金も含めた社会保険料負担が平均で給与の約15%を占めています。OTC類似薬を保険適用から外せば薬剤費を減らせます。外来受診に伴う医師の技術料も浮くことになります。

 健康保険組合連合会によるレセプトの分析では、医療機関を受診した65歳未満の人の14%が、市販薬に同じ成分がある薬のみを処方されており、処方額は919億円と推計されています。処方時の外来受診などを含めた医療費総額は1兆635億円にも達します。65歳以上を含めばさらに増えることになります。医療現場や患者からのOTC類似薬の保険外しの反発は必要です。

(2025年11月11日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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