米ジョンズ・ホプキンズ大学のチームの検証によれば、新型コロナウイルスの感染者が、発症する前日にPCR検査を受けても陽性と判定されることは、3人に1人にとどまるとしています。発症前にPCR検査を受けても、感染者の特定は難しいことが明らかになっています。医療機関の感染対策のために、症状がなくてもPCR検査をすべきであるとの声が上がっていますが、現時点では無症状の人に対するPCR検査については再考を要します。そもそも、PCR検査の精度は良くても7割と考えられていることからも、陰性があっても感染していることの証明にはなりません。PCR検査をするなら、せめて精度が高まる発症者にすべきであるというわが国の従来からの方針を支持する結果と言えます。
しかし、新型コロナは発症の少なくとも2日前から感染性があるとのことから、厚生労働省は無症状でも医師が必要と認めれば、検査に公的医療保険の適用を認める見解を出しています。わが国においては、欧米や韓国などと比較し、PCR検査の少なさを問題視されてきましたが、最近では、PCR検査だけに頼らず、医師の判断や濃厚接触の有無などを総合的に検証することが大切であると考えられるようになってきています。一回あたりの検査費は1万5,000円~1万8,000円で、症状が無い人にPCR検査をしても、患者を効率的に見つけられる可能性は高くありません。無駄に終わる可能性の高い検査に税金や保険料が賄われることは、問題であるとの指摘もなされるようになってきています。
わが国では、今回のコロナ禍でPCR検査体制の不備が明らかとなりましたが、PCR検査を重視して実施してきた諸外国に比べても、これまで死亡者数が少ないことは不幸中の幸いと言えます。いずれにしても、新型コロナにおけるPCR検査だけでは感染者の特定に非効率で、PCR検査の拡大にあたっては慎重な対応が必要です。
(吉村 やすのり)