新型コロナウイルスの感染を調べるPCR検査を自費で受ける動きが広がっています。東京都心の駅前には、唾液などを採取し、低価格で検査する施設も相次ぎ登場しています。早期の発見と療養で、感染の拡大抑止が期待されますが、精度や費用にばらつきがあります。
新型コロナでは、症状がある人や感染者との濃厚接触者らは、行政によるPCR検査の対象となり、公費負担となります。これ以外の人が検査を受ける場は限られていました。渡航前に陰性を確認したいとのビジネス需要もあり、自費検査の機会拡充を求める声は高まっています。
しかし、こうした自費検査を手がける施設の多くは、結果を通知するだけで、医師は診断しません。新型コロナは感染症法で、診断した医師が感染しているかどうかを判断し、保健所へ届け出ることになっています。陽性の結果が出ても医師にかからなければ、感染者の把握漏れが生じ、入院や治療などにもつながらない恐れがあります。民間検査機関は、医療機関と提携して、陽性の結果が出た人が確実に医療機関を受診する体制を整えることが必要となります。
PCR検査は、実際の感染者で陽性の結果が出るのは7~9割で、偽陰性や偽陽性の可能性があります。厚生労働省の調査では、自費検査の費用も2,000~4万円とばらつきがあります。陰性の結果が出ても、翌日に感染リスクの高い行動をとれば意味がありません。陰性でも安心せず、検査の特徴や限界をしっかりと理解することが大切です。
(2020年12月19日 読売新聞)
(吉村 やすのり)