重い病気やけがなどで、長く集中治療室(ICU)に入った患者が、退院後に精神的・身体的な問題を抱えることがあります。この様々な精神身体症状を集中治療後症候群(PICS)と呼びます。集中治療室に携わる医師や看護師の間でも、その認知度は6割にとどまっています。
筋力や肺機能の低下などに代表される身体障害、幻覚や妄想が生じるせん妄が出るほか、記憶が曖昧になったり注意力が散漫になったりする認知機能障害、うつ、不安、心的外傷後ストレス障害(PTSD)といった精神障害などの3つの症状があります。高齢者には、日常生活がままならなくなる運動機能障害が目立ち、若い世代や女性には精神障害が多い傾向があります。また、PICSは患者の家族にも起こり得ます。
対策として、早期のリハビリ開始や家族へのケアなどが注目されています。医師、看護師を中心に、理学療法士ら多職種が関わります。ICUにいる間からリハビリを始め、粘り強く取り組むことが必要になります。コロナ禍で、多くの病院ではICUで患者への医療従事者の接触が最小限となり、家族の入室も厳しく制限されています。患者さんがICUで寝たきりにならないようにしたり、家族らと離れていてもコミュニケーションを取ったりする工夫が必要です。
(2021年7月9日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)