乳幼児に肺炎を引き起こすRSウイルスのワクチンが承認されました。接種が広がれば、国内で年間数万人と推計される入院する子どもが減ると期待されます。妊婦に接種し、生まれてくる赤ちゃんへの発症や重症化を防ぐ珍しいタイプのワクチンです。日本では妊婦へのワクチン接種はあまり広がっていませんが、2009年の新型インフルエンザ、2020年のからの新型コロナウイルスの流行で、ワクチン接種の機会も増えてきています。
RSウイルスはありふれた風邪のウイルスで、咳やくしゃみのしぶきを通して感染します。2歳までにほぼ全ての子どもが感染します。最初に感染した時に重症化しやすく、乳幼児は気管支炎や肺炎になりやすいとされています。2回目以降は軽くなり、大人は鼻風邪ですむことがほとんどです。国内では、2歳未満の子どものうち、年間約12万~14万人が診断され、その4分の1ほどが入院するとされています。
治療薬はなく、酸素や輸液の投与といった対処療法しかありません。心臓などに持病がある場合や、早産で生まれた子は重症化しやすく、こうしたリスクの高い子どもには予防のためのシナジスという抗体薬がありますが、月1回の注射を一定期間、繰り返す必要があります。
今回のワクチンは米ファイザー社製で、妊娠24週~36週の妊婦に1回接種します。接種後にできた抗体が母体から胎児に移行することで、生まれてきた子どもの発症や重症化を防ぎます。発症を予防する効果は、生後3カ月以内で57.1%、重症を予防する効果は81.8%です。
妊婦への副反応は、接種した部位の痛みや頭痛、筋肉痛などが見られますが、赤ちゃんへの影響はないと考えられています。妊婦がRSウイルスの特徴やワクチン接種の必要性、副反応などについて十分に理解したうえでうつことが大切です。
(2024年1月31日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)