経済活動の担い手である企業は、地球環境や持続可能性への配慮を経営の主軸に置き、誰一人取り残さない社会の実現に向けた様々な取り組みを進めています。投資家もESG(環境・社会・企業統治)の観点で投資先の選別を強めています。その背景には環境被害の増大により、環境や人的資源の外部不経済を内部化する動きの加速化や、モノより共感に価値を見いだし、新たな資本主義を求める若い世代の声などがあります。今やウェルビーイングを実現する企業でなければ存続できない時代になっています。
日本経済新聞社が2021年10月に実施した調査によれば、SDGsや社会課題に取り組む企業に対して、好感が持てる、積極的に製品・サービスを利用してみたいと思う、その企業で働いてみたいと思うの各項目で、とても当てはまると回答したZ世代(19~26歳)の割合は、それより上の世代の割合を上回っています。企業のSDGs達成に向けた積極的な姿勢が、若年層から支持を得て、消費や就職活動といった具体的行動につながる好循環が見て取れます。
団塊の世代から若い世代への資産継承が、今後20年で活発化すると思われます。Z世代がお金を動かす時代がすぐそこまできています。ウェルビーイングは多様性の概念がなければ実現できません。日本は多様性、ジェンダーの取り組みが必須です。2021年は人権元年ともいわれていましたが、所得格差やダイバーシティーは無視できない状況になります。こうした分野への取り組みが日本企業の課題になるでしょう。
(2022年1月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)