警察庁によれば、SNSをきっかけとして、不同意わいせつや誘拐といった重要犯罪に遭う子どもが増えています。2024年は458人と、2023年から倍増しています。趣味や自己紹介といった子どもの日常的な投稿を通じ、加害者が標的を探す傾向もみられます。被害予防には家庭での対策が重要になります。2024年にSNSをきっかけとして犯罪に巻き込まれた未成年者は1,486人で、全体としては減少傾向にはあります。
しかし、不同意わいせつや略取誘拐といった生命や財産に深刻な危険が迫り、警察庁が重要犯罪と位置付ける8つの類型に絞り込むと、被害児童は増えています。2023年の改正刑法により、不同意性交の処罰要件が明確化され、相談体制も整ったことで被害を申告しやすくなった面はあります。しかしSNSを通じ子どもを誘い出そうとする加害者の動きは活発で、巻き込まれるリスクも高まっています。被害事例全体の7割で、子ども側の投稿をきっかけとして加害者との接触の機会が生まれています。
契機となった子どもの投稿は、プロフィールや日常生活、趣味・嗜好に関する内容が多くなっています。何気ない子どもの投稿にこそ加害者は目を付けます。言葉巧みに接触し、関係を深めた後に誘い出し犯罪に及ぶケースが多くなっています。家庭での被害予防策が欠かせません。ネットへのアクセスに一定の制限をかけるフィルタリングが有効と考えられています。通信事業者が提供するサービスで、子どもの利用状況も把握できます。SNSに起因する2023年の性犯罪被害事例のうち、9割はフィルタリング設定をしていませんでした。
SNSをきっかけとする青少年のトラブルは、各国で共通の課題です。オーストラリアで、2024年11月に16歳未満のSNS利用を禁止する法律が可決しました。フランスは、15歳未満のSNS利用に親の同意を求める法規定があります。日本でもこども家庭庁が、有識者や関係各省庁の課長級で構成するワーキンググループを立ち上げています。

(2025年3月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)