Z世代のいら立ち

デジタル機器やSNSを操り、社会の変革に挑む1997~2012年生まれは、Z世代と呼ばれています。戦争、格差、政争、そして温暖化など、中高年が様々な問題を引き起こしています。不安、ストレス、悲しみ、孤独を頻繁に感じる若者の割合は中高年より高くなっています。そんな事態を招いた責任を顧みず、最近の若者はと説教するベビーブーマー世代に対し、Z世代は、オーケー、ブーマー(ベビーブーマー世代よ、もうたくさんだ)と叫んでいます。
若者の声は政治に届きにくく、先進国では議員と有権者の年齢が上がりがちで、中高年の利益を優先するシルバー民主主義の弊害が叫ばれています。国際組織の列国議会同盟によれば、G7の議員平均年齢はいずれも高齢で、議会において若者の声を如何に反映させるかが大きな問題となっています。グレーの壁で若者を隔てる長老政治の限界を覆い隠せなくなってきています。
世界44カ国で実施した調査によれば、Z世代の半分がかつかつの生活を強いられ、家庭を持つのは難しいと答えています。かたや列国議会同盟が集計する世界155カ国・地域の議員年齢は総じて高く、世代間対立の火の手がどこかで上がってもおかしくありません。一方、日本では、労使の対立が54%や貧富の対立が50%を認める人々の割合が多く、高齢化が進んでいるわりに世代の対立が39%と強く意識されていません。しかし、わが国でも社会保障の世代間格差など、今後グレーの壁の存在を意識する若者を軽視できなくなってきます。
世界はグレーの壁をどう克服するために、若者に議席や立候補者の枠を割り当てるクオータ制を公式に採用する国も出てきています。モロッコやエジプトなど13カ国で、一部には議員の上限年齢を求める声もあります。若手議員の育成プログラムや選挙資金の支援といった地道な努力も必要となってきています。いずれにしても、グレーの壁は低い方が良いのです。わが国の少子化も若い世代の社会に対するレジスタンスの表現型かもしれません。

(2023年12月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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