子どものこころを診る専門医の必要性

 厚生労働省の2023年の患者調査によれば、1日に外来の精神科を受診した児童は5~9歳で8,200人(2005年度比5,400人増)、10~14歳で8,300人(2005年度比6,000人増)、15~18歳は7,800人(2005年度比3,000人増)です。精神科を受診する子どもの増加は、発達障害の認知度が向上し、学校の先生などが可能性のある児童に指摘するようになったことが関係しています。

 小児科や精神科などで発達障害やうつ病を診断できるクリニックもあります。しかし診療や治療の難しい症例を見分ける深い知見を持つ専門医に対する保護者のニーズは高くなっています。日本児童青年精神医学会が認定した児童精神科医は、2025年4月1日時点で758人です。日本小児科学会や日本児童青年精神医学会などが設立した子どものこころ専門医機構が認定する専門医(子どものこころ専門医)も、2026年1月1日時点で1,161人です。ケアを必要とする子どもは増えていますが、専門家は全く足りていません。地域格差も深刻です。専門医1人当たりの児童数は最も少ない香川県で6,148人、最も多い栃木県では2万9,131人と偏っています。

 児童精神科医になるためには、医師免許を取得後に精神科専門医もしくは小児科専門医の資格を取り、さらには3年以上の研修を受けて子どもの心に対する専門医の認定を受けることになります。専門医となるまでに時間がかかるのは欧米も同じですが、問題は医師側の負荷にあります。初診では子どもや両親からしっかりと話を聞く必要があり、学校や児童相談所などと連携も必要になる場合もあり、結果として医師1人あたりが診る患者の数が限られてしまいます。海外では看護師やソーシャルワーカーらが連携するチーム医療が標準化されています。

(2026年7月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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