AIによる創薬期間の短縮

 新薬を開発するには、まず病気に関わる遺伝子やたんぱく質など薬を作用させる標的を決めます。そのうえで標的に作用する薬の化合物を探します。化合物の構造を少しずつ変えながら効用の強さや体内への吸収しやすさなどを調べ、安全性や効能を精査し、人体に投与できる新薬候補に育てます。

 塩野義製薬は、AIで薬の開発期間の短縮に挑んでいます。有望な化合物を絞り込み、臨床試験(治験)に入るまでの期間を3年に半減させています。治験に入る前までの創薬期間は、6~8年ほどかかっています。研究を始めてから治験に進む候補を選ぶまで2年、その後の安全性確認など治験入りに必要な非臨床試験を1年で終え、全体を3年に縮めます。

 効率化が求められるのは、医療の高度化とともに創薬の難易度も上昇しているためです。日本製薬工業協会によれば、承認までに至った低分子薬を開発するために合成された化合物の数は大幅に増えています。2000~2004年度の累計では、薬1件あたり1万2,888個でしたが、2020~2024年度には3万2,490個に増えています。開発コストも膨らんでいます。テロイトによれば、2025年の新薬1件あたりの研究開発費は10年前と比べて1.8倍になっています。

 AI実装の動きは業界で広がっています。中外製薬は、抗体医薬品向けに独自のAIを開発し、従来と比べて標的との結合強度が1,800倍以上になる抗体を得ています。アステラス製薬は、AIとロボットを組み合わせ、6万通りの化合物を設計・評価する研究基盤を整えています。

(2026年10月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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