これまでの少子化対策

政府が初の総合対策エンゼルプランを策定したのは、1994年のことでした。バブル経済下の1989年に出生率が当時の戦後最低を記録した1.57ショックをきっかけとしています。育児休業給付の創設や保育所の拡充、延長保育の実施といった7項目重点施策を打ち出しました。2003年に少子化社会対策基本法を、2012年に子ども・子育て支援法などを施行し、2023年にはこども家庭庁が発足しました。
少子化対策の関連費用は、国の当初予算ベースで2022年度に6.1兆円と、10年前からほぼ倍増しています。こども家庭庁は、2023年度予算で少子化対策を含めて4.8兆円を計上しています。2004年度からの予算は総額66兆円を超え、同じ時期の公共事業関係費のおよそ半分に匹敵しています。
2005年に1.26まで下がった出生率は、2015年に一時は1.45まで回復しています。その後は再び低下傾向にあります。出生数も右肩下がりで、エンゼルプランを策定した1994年時点のおよそ124万人と比べて、2023年は4割ほど少ない水準に落ち込んでいます。
これまでの政策は、結婚して子どもが生まれた後の育児の支援が中心でした。保育所の整備による待機児童の減少など一定の効果はありましたが、出生率の改善には至っていません。経済的な支援として、政府は児童手当の支給を続いていますが、幅広い世帯への現金給付は、出生率を上げる対策としては投入する財源に対する効果が低いとの声も聞かれています。

(2024年6月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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