日本産科婦人科学会の報告によれば、2010年現在治療周期総数は242,160周期であり、世界で最も多く体外受精(IVF-ET)などによる生殖補助医療が実施されている。治療周期の半数以上で顕微授精(ICSI)が実施されている欧米に比し、わが国においてはその割合が低い。一方凍結胚を用いた治療周期が多く、出生児数も凍結胚による妊娠が多く、出生児の半数以上を占めることが特徴である。年間2.8万人以上の子どもが体外受精関連技術で出生にいたっており、総出生児数に占める割合は1999年より100人に1人の時代となり、2010年現在では2.70%と、実に37人に1人の割合でARTにより子どもが誕生している。しかし、その割合は、3%を超える国が多い欧州諸国と比較して決して高頻度とはいえない。
治療法別の2010年の妊娠成績を表に示す。凍結胚の移植あたりの妊娠率は33.7%と、欧米に比して極めて高値を示しているが、IVF-ETやICSIの採卵あたりの妊娠率はそれぞれ10.4%、8.1%と低値であり、治療周期あたりの妊娠率は数年前に比較し却って低下している。現在移植あたりの妊娠率は20%以上を示しているが、生産率は15%前後と低値である。この原因は、高齢者が多いこと、低刺激法導入による一周期あたりの採卵数の減少、凍結胚移植周期の増加などが考えられる。また流産率はいずれの治療であっても25%前後と高率にみられ、依然として自然妊娠の2倍程度である。