60歳以上のシニア雇用の存在感が高まっています。総務省の労働力調査によれば、60代以上の就業者数は2023年に1,468万人でした。就業者全体に占める比率は21.8%で、データのある1968年以来過去最高を更新しています。20~34歳までの就業割合である23.2%に肉薄しています。
シニア自身の就労意欲も高まっています。日本経済新聞社世論調査によれば、何歳まで働くつもりかを聞いたところ、70歳以上との回答が39%を占め、2018年の調査開始以来過去最高となっています。意欲が高く働くシニアが増えるにつれ、待遇面での不満が顕在化しつつあります。
パーソル総合研究所によれば、60歳以降に転職した人の理由は、給与に不満があるが2023年に18.3%となり、倒産・リストラ・契約期間満了の10.9%を逆転しました。厚生労働省の調査で、定年制がある企業の比率は96%に上っています。再雇用後は給与水準が下がる場合が多く、シニアが貴重な戦力となるなか、企業は人材のつなぎ留めに向けて待遇向上や就労環境の整備が欠かせません。
60歳以上で再雇用したシニア人材の収入を高める企業が増えています。スズキは2024年から再雇用した従業員の給与を現役並みに引き上げています。日本精工やジーエス・ユアサコーポレーションも賃上げに踏み切っています。待遇改善で優秀な人材を確保し、深刻化する人手不足に対応しようとしています。
(2024年5月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)