東京は、地方から若者を引き寄せ、出生率を下げるブラックホールと形容されています。2040年に15~64歳の現役世代が2割減る8がけ社会に向かう中、東京の引力が増すほど、地方の人手不足は加速し、少子化問題の解決を難しくさせることになります。人口戦略会議は、4月のリポートで、東京都の16区や大阪市など全国25市区町村が、ブラックホール型自治体に該当すると発表しています。
地方において就活を求めても、キャリアの選択肢が限られています。仕事も娯楽も子育ても、選択肢が多い東京に若者が集まるのは仕方ありません。東京での一人暮らしは家賃や物価も高く、定年まで働き続けるイメージもわきません。しかし、それ以上に東京は刺激に溢れています。
過密な住環境や高騰する住宅費、将来の社会保障の逼迫や災害への脆弱性にもつながる東京一極集中は、都民の暮らしにも直結します。しかし、巨大な財源を持つ都が魅力の向上を図ろうとすればするほど、地方から人を引き付ける一極集中が強まるジレンマに陥っているようにも見えます。
性別役割分業のもとで、人口の一極集中が経済的にプラスに働いた時代もありましたが、今後は投資を東京の外に向ける必要があります。地方に企業を誘致し、居住・子育て環境を整備できます。ジェンダーギャップの是正や働き方改革も欠かせません。小手先の子育て支援策ではなく、日本全体の将来を見据えたビジョンを掲げることが大切となります。
(2024年7月5日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)