会計検査院の調査によれば、全国の自治体における約4割の事務手続きで、マイナンバーによる情報照会が活用されていませんでした。社会保障や税、災害分野などの1,258の手続きの約4割で、事務処理時のマイナンバー情報照会がゼロでした。照会している自治体が全体の1割未満にとどまる手続きが9割を占めています。
活用が低調な理由としては、システムを使うための環境整備ができていない、住民から添付書類を出してもらった方が効率的、システムに市民の最新情報が反映されておらず使えないが挙げられています。その結果、住民には、本来なくなるはずだった負担が生じ続けています。例えば、退職などに伴う国民健康保険に関する手続きでは、約220万人がシステムを使わず、紙の証明書の提出を求められています。
マイナンバーカードは、公平な税負担や社会保障につなげるため、政府が国民の所得や資産を正確に把握しやすくする狙いで導入されましたが、個人情報の集約に懸念の声もありました。行政での活用が進まなければ、国民の利便性の向上につながらず、マイナンバー施策推進の目的や意義について理解を得るのは難しくなります。
(2024年5月16日 日本経済新聞 朝日新聞)
(吉村 やすのり)