マウス実験がヒトに有効か?

ウスは、以前よりヒトの病気の研究や薬の開発の目的で実験動物として最も汎用されている。ヒトと同じ哺乳動物であり、小さく飼育しやすく、約2万5千個ある遺伝子のほとんどがヒトと共通していることが、マウスが実験動物として使用される主な理由である。

最近日米の研究チームで異なった研究成果が発表されている。ヒトとマウスでは遺伝子の働きに違いがあるとする米チームの報告は正しいと思われるが、この結果からマウスが人間のモデルにならないとするには少し無理がある。遺伝子の働き方が共通している部分に注目する限り、ヒトのモデルとして有用であるとする日本チームの考え方も理解できる。

いずれにしても、マウスは遺伝子操作が比較的簡単であり、さまざまなタイプの遺伝子改変マウスがつくることができるという点で、ヒトの病気の治療や薬の開発に役立つ実験動物である。しかしながら、生命現象の中にはマウスとヒトが異なるメカニズムによって起こる現象もある。特に我々の研究主体である生殖現象などは、マウスとヒトではそのメカニズムがまったく異なり、マウスの研究は役立たないことが多い。そのためヒトによる臨床研究が必須である。

(2014年9月11日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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