メンタル不調による経済損失

 厚生労働省によれば、うつ病などの気分障害の外来患者数は2023年に156万6,000人と、約20年前に比べ約2倍に増えています。診断されていなくもこころの不調を抱える人は多くなっています。こころの不調やうつ病による経済損失が膨らんでいます。日本全体でGDPの1%強にあたる年間約7.6兆円が失われているとの試算があります。欠勤によって3,000億円、出勤しても思うように働けないことによって年7.3兆円の経済損失が発生しています。

 国内で気分障害が増加した背景には様々な要因があります。職場や学校での厳しい競争、経済的不安、SNS疲れなどです。国立精神・神経医療研究センターなどの研究では、思春期にインターネットを使い過ぎると、リスクが高まることが分かっています。睡眠時間が削られたり、人間関係を過度に気にしたりするためです。12歳時点でネットを使い過ぎると、16歳時の精神症状が1.65倍、抑うつが1.61倍に増えています。

 こころの不調は世界でも大きな課題となっています。うつ病は欧米でより深刻とされ、経済格差や薬物依存などが背景にあるとされています。気候変動が悪影響を及ぼすという分析もあります。高温や熱波により睡眠障害が増え、精神状態が悪化します。洪水や山火事の被災者はうつ病の発症率が上がります。辛い時はSOSを出すべきです。周りに不調を抱える人がいたら、話を聞いて共感するのが大切となります。日本は相談できる場所が限られており、医療機関の手前でサポートを受けられる場所があることが必要となります。

(2025年11月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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