世界銀行は毎年1人あたり国民総所得により、世界の国・地域を四つの所得グループに分類しています。2024年は、低所得(1,135ドル以下)が25、下位・中所得(4,495ドル以下)が50、上位・中所得(1万3,935ドル以下)が54、高所得が87カ国でした。1990年以降、中所得から高所得へ移行できた国・地域は34にとどまっています。中所得国が発展パターンを転換できずに成長が低迷して高所得国入りを果たせないことについて、世界銀行は2007年に中所得国の罠と表現しています。
世界の未来は中所得国にかかっています。人口の約75%が暮らし、世界全体の経済活動の約40%を担い、世界の二酸化炭素排出量の多くを占めています。中所得国が直面している問題には、成長するにつれ成長が鈍化する罠、経済的な停滞に陥りがちだということがあります。その可能性は先進国の3倍も高くなっています。
中所得国では、資本、人材、エネルギーの利用が先進国に比べ、非常に非効率的なことです。中所得国が先進国に追いつく方法は二つあります。一つは、人的資本を増やし物的資本を蓄積することです。二つ目は、資本や才能、エネルギーの利用効率を向上することです。中所得国の多くは、最初の投資主導の段階に長くとどまる過ちを犯しています。現状維持の力が強くなれば、罠に陥る傾向が強くなってしまいます。
罠に陥らないためには、まず大切なのは経済的自由で、企業の成長や再編、廃業を認めることで、雇用と生産性の双方が向上します。次に、機会均等を通して、女性や差別を受けるマイノリティーの才能を活用します。そして、一層の貿易の自由化です。

(2026年1月28日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)





