財務省が米英独仏の4カ国の所得税の課税最低限と比べたデータによれば、単身者の場合、2024年1月時点は日本が121万円と最も低く、米国は250万円、ドイツは261万円、フランスは450万円と日本の2倍以上に達しています。米国は複数の控除を同時に利用できないケースがあるなどの制度の違いはありますが、日本の単身者の基準は、数字上は主要国よりもぐっと低くみえます。
その背景には歴史的な円安もあります。1ドル=104円だった3年前時点のデータなら、米国は130万円、ドイツは165万円と差は縮まります。単身、夫婦のみの世帯なら、為替を考慮しても日本人の課税最低限は低く、上げる余地はあります。
国際比較をする際には、家族向けの給付などで実質の家計負担が下がる点も考慮する必要があります。日本は扶養控除などの仕組みが比較的しっかりしていて、子どものいる世帯には優しくなっています。日本では児童手当が支給されています。中学生の子どもがいる片働き夫婦の場合の日本の課税最低限は168万円ですが、給付も加味した基準だと534万円になります。英国は500万円、米国は799万円となっています。
OECDによれば、直近の日本のフルタイム労働者の平均賃金は、米ドル換算で米国の6割弱にとどまっています。平均賃金との比率を考慮すると、子持ち世帯の給付も加味した日本の課税最低ラインは英国より高く、米国と遜色がないとみることもできます。
(2024年11月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)