人材育成を成長の原動力と捉える人的資本経営を掲げる企業が増えています。会社の経営理念と従業員の働きがいを結びつくことで、生産性を引き上げ、業績向上を目指します。
政府は、企業に対して人的資本経営に関連した情報について、人材育成、多様性、コーポレートガバナンス(企業統治)などについての取り組み状況を開示するように促しています。中長期的な経営構想やパーパス(企業の存在意義)、人的資本や知的財産などの無形資産に対する投資家の注目も高まっており、人材投資の強化や従業員の満足度の向上などに取り組んでいる企業は多くなっています。
人的資本経営の柱となる社員の仕事に対する満足度を示すエンゲージメントを重視する企業は増えています。しかし、日本の従業員のエンゲージメント調査結果は、諸外国と比べて非常に低率です。役職や給料が上がることも大切ですが、個々の社員が働く動機をしっかりと持ち、互いに認め合う企業風土作りが必要になります。優秀な人材を集め、定着を図るには企業の体質を改善していく必要があります。その手立てである人的資本経営をお題目に終わらせないようにするには、経営陣と従業員らがきめ細かい地道なコミュニケーションを取れる体制を築くことが大切です。
(2024年7月26日 読売新聞)
(吉村 やすのり)