一般に保育所は,
働く女性が子どもを預ける場所として考えられている。実際に共働きの若いカップルが子どもを預けるケースが多い。しかし子どもが成長するためには、社会との関わりが必要となる。妊娠・出産後の女性は精神的な変調をきたしやすく、特に育児の際には抑ウツ傾向になる女性が多い。昔は両親や家族のサポートもあったが、現在では核家族化が進み、産後のお母さんは誰からのサポートも受けることはできない。1人で赤ちゃんを育てていかなければならないという精神的なストレスが、児童の虐待や育児放棄にも繋がりうる。
ヒト、そもそもホモサピエンスは、1人では生きてゆくことはできない動物である。以前より群をつくって生きてきた。子ども同じであり、多くの人々のサポートがあって、初めて生きてゆくことができる。つまり保育所は働く女性のためだけではなく、働いていない女性にとっても子どもを教育する大切な場ということになりうる。フィンランドにはネウボラという素晴らしい制度がある。妊娠前から就学 にかけて一貫して1人の保健師がサポートするシステムである。親になる心構えから子育て、教育にいたるまで、全般にわたって夫婦のサポートする支援センターである。こうした活動によって幼児虐待や子育ての辛さによるうつ病などの社会的課題が少しずつ減少しているようである。日本でも三重県名張市のようにネウボラを始める行政機関ができた。昔は良かったと嘆くのではなく、日本国民ひとりひとりが、社会が子どもを育てるという意識をもつことが何よりも大切である。
(吉村 やすのり)