保険料上限の引き上げ案

厚生年金の保険料は、月収水準によって32段階に区切った標準報酬月額に18.3%をかけた金額を労使で折半する仕組みとなっています。現在の標準報酬月額の上限は65万円で、本人の保険料は月5.9万円となります。標準報酬月額が65万円に到達すると、月収は150万円でも1,000万円でも負担する保険料額は変わりません。老後に受け取る年金額も同じです。
厚生労働省は、上限を75万円、83万円、98万円の3通りに上げた場合の影響を試算しています。上限の引き上げによって保険料収入が増え、年金財政は厚くなります。上限を引き上げた場合、賞与を除く年収換算で798万円以上の人の負担が増えます。
厚生年金の保険料は、労使折半のため事業者側の負担も増します。上限75万円なら、企業が追加で出さなければならない金額は年間2,000億円、上限98万円なら5,000億円規模になります。事業者にとっては負担が増えるのみで、中小企業の賃上げ努力に水を差すことになります。所得が多い人に応分の保険料を負担してもらい、中低所得者の年金にあてるという目的もあります。

(2024年7月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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