財政検証の推計は、人口、経済、労働力でそれぞれ前提を置いて、いくつかの未来を描いています。このうち労働力は、独立行政法人の労働政策研究・研修機構の推計を基に、就労の進み具合で3ケースが設定されています。
最も進むケースだと、就業者数は2020年の6,710万人から2040年に6,734万人へ増え、その時の20~69歳人口とほぼ同数になります。現在の年金受給開始は65歳ですが、69歳現役の時代が到来する形です。
労働参加が一定程度進む真ん中のケースでも、2040年に6,375万人と、20~64歳人口を超え、65歳定年が当然の社会になっていると推測されます。高齢でも働き続けることができれば、本人の希望で年金の受け取りを遅らせて、将来の受給額を増やすことができる制度があります。75歳まで延ばすことができ、1か月遅らせるごとに0.7%増やせます。
現行の在職老齢年金制度では、働く高齢者の賃金と年金額の合計額が月50万円を超えると年金額が減ります。2060年には、1.5人の働く人で1人の65歳以上を支えるとの推計もあります。年金制度を考慮しながら働き続け、いかに自分の老後を豊かにしていくか、現在50歳以下の人たちにとっては、個々人の選択がより問われる社会となりそうです。
(2024年7月12日 読売新聞)
(吉村 やすのり)