共同親権の導入

離婚後に父母双方が子の親権を持つ共同親権を導入する改正民法が、参院本会議で成立しました。夫婦が別れても子の幸せを優先しながら子育てする責任は父母双方にあると明確になりましたが、ドメスティックバイオレンスのような個別事情への配慮が欠かせません。
親権を持たない親には、親子の断絶を招くとの不満がありました。子どもとなかなか会えなかったり、進学などの重要な決断に関われなかったりするためです。面会交流を求める家庭裁判所への調停申し立ては、2022年に1万2,876件と、20年前の4倍ほどに増えています。
親権は、財産管理権と子どもを監督して教育する監護する権利を含みます。このうち監護を巡る審判や調停の件数は近年高い水準が続いています。最高裁によれば、子どもの引き渡しや養育費を求める訴えは、監護者の指定といった申し立ての件数は、2022年に4万4,163件となり、2012年の4万244件からの10年で1割ほど増加しています。平均審理期間は8.5カ月と、3.3カ月長くなっています。
審理の長期化の背景には、親子の面会交流の設定など丁寧な手続きが必要な事案が増えたことや職員不足などがあります。結論までに時間がかかれば、子どもへの心理的な負担も懸念されます。改正法施行に伴って、家裁に持ち込まれる紛争は増加も予想され、ウェブ会議の活用など審理の迅速化や家裁の体制強化が不可欠となります。

 

(2024年5月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。