放射線被曝は、外部被曝と内部被曝に大別される。外部被曝とは原発事故などにより、外部から受ける被曝であり、内部被曝とは放射線物質を経口摂取した場合におこる被曝である。原発事故以来3年以上が経過した現在、問題となるは内部被曝である。軽度ではあるが、長期にわたる内部被曝が母子に与える影響は、世代を超えて継続する可能性は否定できない。チェルノブイリにおける内部被曝の影響として考えられているが、事故当時15歳未満であった児童にみられた甲状腺がんの増加であった。その他白血病や甲状腺がん以外のがんの増加は観察されていない。現在のところ特異的な遺伝的影響もみられていない。
福島県は、事故当時18歳以下であった県民を対象に甲状腺検査を実施している。それによれば子ども30万人のうち、がんと疑いのあるとされた104人のうち、がんと確定されたのは57人で、事故当時の平均年齢は14.8歳であった。10代後半の甲状腺がんの発症率は10万人あたり1.7人で、それと比較すると今回の福島県の頻度は異常に高い。しかし今回の検査では、無症状の人を網羅的に調べてがんを見つけ出しており、通常のがん発症率と単純に比較することはできない。いずれにしてもチェルノブイリにおける前例もあり、慎重なフォローアップが重要である。内部被曝の子ども達の次世代に及ぼす影響にも目を配らなければならない。
(災害と周産期医療:吉村泰典)
(2014年8月24日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)