これまでのわが国の医学教育は、特に臨床実習においては見学主体の受け身型であったが、欧米で一般的である学生が患者と接する参加型へ転換する動きがでてきている。これまでの臨床実習は、診療や治療を行う医師の傍らで学生が見学する形式であったが、今後は患者と直接接することにより、学生が実地臨床に携わる内容に変える。実習期間もこれまでの59週間から73週間と大幅に増やし、海外での研修を取り入れることも考えられている。
わが国の医学教育は明治以来独自のスタイルで発展してきたために、国際基準とは大きく乖離している。世界医学教育連盟は、授業内容や学生の評価方法など細かな基準を示しており、世界の多くの国では学生が実際に患者と接する参加型が取り入れられている。わが国の医学教育は座学が中心であり、実習も受け身型がほとんどである。わが国の医療水準は世界最高峰であるが、医学教育の遅れは否めない。教育の改革が必須であるが、医学教育に対する国民の理解がより重要となる。大学病院においては、医学生の診療に抵抗感を示す患者が大変多い。医学教育のあり方に対する国民の理解も大切である。
(2014年9月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)