国立社会保障・人口問題研究所の世帯数の将来推計によれば、65歳以上の単身高齢者数は、2050年に1,084万人と、2020年時点の約1.5倍になるとされています。65歳以上人口に占める単身者の比率も、2020年の20%から2050年には28%となります。
注目すべきは、単身高齢者に占める未婚者比率の急上昇です。単身高齢男性に占める未婚者の比率は、2020年の34%から2050年には60%になります。単身高齢女性の未婚率も、2020年の12%から2050年には30%になります。生涯で一度も結婚していない単身高齢者の増加は、配偶者のみならず、子どももいない人の増加を意味します。
今後、家族・親族のいない身寄りのない高齢者の急増が想定されます。従来家族が担ってきた機能は、日常生活などに必須の要素が多いため、身寄りのない高齢者への公的支援が必要になります。特に重要なのは、長期にわたり身寄りのない高齢者に伴走しながら、必要な支援をコーディネートする機能です。地域の状況により異なりますが、信頼性を確保するためにも国や自治体が財政支援を含め基盤を整備することが重要になります。
さらに、各地域で人々が集える居場所を数多くつくり、友人や近所の人などとのインフォーマルな関係を構築していくことが必要になります。日本、米国、ドイツ、スウェーデンの単身高齢者に対する内閣府の調査によれば、病気や日常生活に必要な作業を頼れる人がいるかと尋ねると、日本は他国に比べ、友人や近所の人の割合が著しく低くなっています。日本では家族以外の人に頼ることが苦手な状況がうかがえます。
(2024年6月11日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)