固定電話の危機

 総務省によれば、固定電話の契約数は1997年度に6,285万回線でピークを迎えました。携帯電話サービスが1987年に始まると急速に普及し、2000年には携帯電話の契約数が固定電話を上回りました。2023年度の携帯電話の契約数は2億2,192万回線で、固定電話の16倍にあたります。固定電話は減少し続けており、NTTは2035年頃に500万回線になると見込んでいます。

 NTTが採算の厳しい離島でも固定電話網を維持するのは、全国一律で固定電話サービスを提供するユニバーサルサービスの義務がNTT法で決められているからです。しかし、NTTは固定電話のメタル回線は、2035年頃に老朽化で使えなくなるとして、携帯電話を中心にした制度へ移行を求めています。

 背景には、NTT東日本と西日本の固定電話事業の窮状があります。設備の老朽化や加入者数の減少で、2022年度には東西で年間300億円の赤字を計上しており、2035年度には900億円程度に膨らむと見通しです。

 携帯はかつて移動通信と呼ばれたように、動きながら使えるのが利点です。しかし、地下など電波の届きにくい場所や人が密集する場所ではつながりにくくなることもあります。携帯があれば固定電話はなくてもいいという制度では、インフラとして脆弱になります。

(2024年11月28日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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