東京大学が授業料の値上げを検討しています。国立大学は国の財政の後ろ盾が手厚く、私立大学に比べて学費が安くなっています。物価高などにより研究、教育コストが増え国立大学も財政的に苦しくなっています。国立大学の授業料は、国が標準額を年53万5,800円と定めています。①物価高、②私大の要請、③国際化に向けた留学生・教員の誘致、④産学連携の資金確保、⑤2005年から改定していないなどが理由にあがっています。
慶應義塾大学の伊藤公平塾長の提言は、受益者負担の原則が必要性です。負担が難しい学生への給付型奨学金の充実も合わせて取り組むべきだと提起しています。私立大学は定員割れする大学も多く、国立大学よりも相対的に高い授業料は学生募集のネックになっています。国立大学の授業料は完全に一律ではなく、大学の判断で20%高い64万2,960円まで増額できます。
国際競争力の向上には優秀な国内学生を引き留め、留学生に選ばれる教育環境を整えることが欠かせません。競争力と切り離せないのが産学官連携です。企業との共同研究や大学発ベンチャーの育成に取り組む大学も増えていますが、これも資金が必要になります。国からの運営費交付金は減少傾向にあります。経費の一部を学生に負担してもらうことは避けられない状況にあります。
国際的にも授業料は上昇しています。OECDによれば、調査した国のおよそ3分の1で、修士課程の授業料が2020年度までの10年間で増えています。北欧には授業料の学生負担がない国も存在しますが、フィンランドなどは外国人学生に授業料を導入しています。
(2024年7月12日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)